送月現語 2019年1月29日

 社会人になって間もないころ、ある先輩から「社会人の心得」なるものを教わった。第一に何かを見ても、見なかったと言え、そうすれば、後でなぜ黙って見ていたんだと咎められない。第二に、世間話と悪口は何も聞かなかったことにしろ。第三に、何も言うな、そうすれば悪目立ちすることもないし、舌禍になることもないからだ

 ▼そのころは、「確かにそうだ」とうなずいた。この話に異論を抱いたとしても、それを告げれば舌禍になる。誰かに話しても、話が回りまわって本人が知るところになれば、決して良い思いはしないだろうと、頭に三匹の猿を思い描いて仕事に戻った

 ▼集団で活動をしていると、様々な人が顔をそろえる。その中には当然好かれる人もいるし、嫌な思いを他人にさせる”イヤなヤツ”もいる。そしてグループ内で強者の集団と、弱者の集団が出来上がり、またどっちつかずの人と分かれる。互いに仕事をしているときは大抵何も言わない。誰かの軽い悪口を叩くことがあっても、当人の耳に入ればどんなことになるか分からない。なので小休止の時間とか、余暇時間の間にグループごとに悪口大会を開く。そして当人の前では、あたかも普通に接し振る舞い、荒波を立てることなく、これを幾度となく繰り返す

 ▼非生産的だと指摘するのはごもっとも。だけど人は理にかなわない行動をすることが往々にしてある。誰しもそんな光景を目にすることはあるだろう。悲しかな人が生きる上で目を覆うことができない実情なのだ

 ▼しかしこのご時世、テレビや新聞がそんなことをするようになるとは思いもしなかった。昨日今日のNHKの報道は、三猿そのものだった。多くの時間をスポーツ選手のことや、インフルエンザの流行問題、兵庫県明石市長のパワハラなどがトップで報じられる一方、重要度が比較的高い厚労省統計不正などは最後のほうにほんの5分ぐらい時間を取って報じるだけだった。アリバイ作り程度に報道はしているので、内容にいちゃもん付けるつもりは全くないが、インフルエンザやらスポーツ選手の話と、統計不正、国政の方向を決める国会のニュースだったらどっちのほうが重要度が高いだろうか

 ▼もしも報道が見ざる聞かざる言わざるの三猿になったら。

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